BRAUN

より少なく、しかしより良く

photo_Yoko Ohata text_Keisuke Tajiri (lefthands)

インタビュー

BEAMS クリエイティブディレクター 青野 賢一

1921年にドイツで誕生して以来、世界中で愛され、数多くのクリエイターに影響を与えてきたBRAUN。時代と国境を超えて支持を集めてきた背景には、一貫した「Less, but better(より良いデザインは、より少ないデザインである)」のデザインフィロソフィーがありました。では、今の時代を牽引する人たちにとって、BRAUNのデザインはどのように映っているのでしょうか。クリエイターインタビューの第1回目は、BEAMSのクリエイティブディレクターであり、DJや執筆業など多彩な活動を続ける青野賢一氏。青野氏とBRAUNとの最初の出会いは25年前にさかのぼるということで、そのときのお話を伺いました。

最近の活動について教えていただけますか。
平日に原稿の執筆や音楽の選曲をして、週末はDJをしていることが多いですね。ちなみに昨年は、渋谷PARCOで行われたアートイベント「シブカル祭。」というものがあって、その実行委員もやりましたね。今年もお手伝いします。また、最近は月に1本程度、いくつかの大学で講義をしています。
大学ではどんな講義をされているのでしょうか。
主に19世紀半ばからの、消費社会の成り立ちを始めとして、高度経済成長を経て現在に至るまでの流れを教えています。現代思想家の著書を引用しながら、「消費」というものを捉えていく作業です。それらを紐解いていって、じゃあこれから何をやったらいいんだろう、これからこういうのが求められるんじゃないか、ということを教えています。
お部屋を拝見したところ、アンティークの家具やアート作品などが数多く並んでいますね。インタビュー前に、インテリアにこだわりはないとおっしゃられていましたが、そんななかにもこだわりがあるように見えますが(笑)。
たぶん気のせいだと思う(笑)。好きなものだけを適当に集めたらこうなったんです。実際、年代も国もバラバラですしね。
バラの絵のあるキャビネットもそうですが、どこか青野さんらしいセレクトに見えますね。
好きなものの方向性はあるかもしれません。例えば、日本の賃貸の住環境に18世紀の重たい雰囲気のある家具は取り入れにくいと思います。床や壁の材質にまでこだわる必要があるし、そもそも空間としての広さも足りないですよね。
たしかにそうですね。
最近、シャンデリアがよく売れているそうなんです。そんなに値段も高くないもので。でも、それが一般的な日本の住宅に合うかというと、違和感があると思うんですよね。天高もないところに取り付けると空間も狭くなるし、光の広がり方を見てもあまり美しいものにはならないんじゃないかな。
ものとしてはいいかもしれないけれど、空間で考えたときにどう見えるか、というのは大切ですよね。
そうですね。だから、家具を選ぶときは空間との相性を常に意識しますね。ファッションと同じように、部屋全体のバランスを見るようにしています。
それでは、どんな家具が日本の住環境に合うのでしょうか。
ミッドセンチュリー以降のモダン家具や、北欧の家具がフィットすると思います。コンパクトなサイズのものが多いので、収まりがいいですね。
アルヴァ・アアルトのイスやダイニングテーブルは、BEAMSでも取り扱っていましたね。
イスとテーブルは実際にBEAMSで買いました。後ろにあるスウェーデン製の本棚や、寝室にあるブルーノ・マットソンのイスもそうですね。
現在、BEAMSでもBRAUNの時計を取り扱っていますが、今までに持っていたことはありますか。
実は、初めて見たときから欲しいなとは思っていたのですが、買ったことはないんです。ずっと変わらないままあるので、いつでも買えると思ってつい先延ばしになってしまって……。そういうのありますよね(笑)。そもそも、BRAUNとの最初の出会いは、まだ大学生のときだったんです。1987年にアルバイトとして入社したInternational Gallery BEAMSでは、当時としては珍しくMoMAのパーマネントコレクションとか、ヨーロッパのデザイナーズブランドとか、まだ日本に入っていないようなものを取り扱っていました。そのひとつにBRAUNのクロックもあったんです。今思えば、発表された同じ年にちゃんとお店に並んでいたんですね。その頃は今のように情報が多い時代ではなかったので、取り扱っているお店は少なかったと思います。
そのときのBRAUNの印象を覚えていますか。
シンプルだけれどモダンな佇まいだな、と思いました。他に電卓もありましたよね。
青野さんの世代は、BRAUNが電卓やレコードプレーヤーを作っていたことを知っている人が多いですよね。
レコードプレーヤーはものすごくカッコよかったですね。当時、欲しかったな。僕らの世代は、BRAUNを好きな人が多かったと思います。
時間を知る、ということではスマートフォンでも代用できる今の時代、青野さんにとって時計とはどのような存在なのでしょうか。
時計がある空間っていいですよね。このように手に収まるサイズのものはウォールクロックと違い、手軽に動かせる良さがあります。寝るときはベッドサイドに置いて、料理をするときはキッチンに持ってきて時間を計ったりと、いろいろなシーンで自由に使えて便利ですね。それに、このサイズ感だとトラベルクロックとしても使えるので、出張先のホテルでサッとバッグから取り出してベッドサイドに置くとスマートですよね。
今まで手にしたことがなかったということで、これを機にひとつ差し上げますので、ぜひお使いください。
ありがとうございます、うれしいです。どれにしようかな、丸いタイプもいいけどやっぱり最初に出会った四角いタイプがいいですね。色は白がすてきです。
今は白も人気がありますね。青野さんが出会ったころのBRAUNといえば、一般的には黒のイメージですよね。
そうなんですよ。当時はポストモダンが流行っていて、ポップな配色よりも黒くてスタイリッシュなものが多かったです。
黒ではなく、白を選ばれた理由というのは。
先ほどの話にもなりますが、ファッションと同じ考え方で、プロダクトだけを見ると黒もいいのですが、自分の部屋の空気やインテリアとの相性といった、トータルコーディネートで見たときには白がいいですね。白って無難な色に思われがちですが、意外に目立つから置く場所を選びそうです。
例えば、青野さんの場合はご自宅のどこに置きますか。
スタンダードにいくと寝室だと思うんだけど、キャビネットの上に置いてもよくある風景ですよね、どうしようかな(笑)――後ろの本棚にちょこんとあるといいかもしれないですね。ほら、本棚とクロックのサイズ感がぴったり。BRAUNのデザインは、シンプルに削ぎ落とされた空間はもちろんですが、自分の部屋のようにものが多い空間でも馴染んでくれるのがいいですよね。
改めてご覧になって、BRAUNのデザインはいかがでしょうか。
純粋に美しいですね。直線と曲線の組み合わせにも、徹底した美学が感じられます。配色もミニマルで好きです。それに、他社のプロダクトと比べるとデザインにブレがない。時代とともに変わっていくものが多いなか、1980年代の発売当時から変わらないデザインというのは素晴らしい。
BRAUNには「Less, but better(より良いデザインは、より少ないデザインである)」というコンセプトがあるのは、ご存知ですか。
まさにそれを体現していますね。一切の無駄がなく、普遍的なデザインだからこそ、長く愛されるということですね。
最後になりますが、BRAUNの時計をはじめ、青野さんのお眼鏡に適ったものたちに、共通項はあるのでしょうか。
どんなものにも、何か納得させてくれる解があると思っています。デザインだったり、機能だったり。それがしっかりと表現できているものに、惹かれますね。BRAUNは、明確な解答をぽんっと示してくれていて、僕にはすごく気持ちがいいんです。
ありがとうございました。
  • 青野さんの選んだ商品
  • Alarm Clock BNC002WHWH
  • 3,990円(税込)
青野 賢一
1968年生まれ。〈BEAMS〉 クリエイティブディレクター、〈BEAMS RECORDS〉ディレクター。「ビームス 創造研究所」に所属し、執筆、選曲、展示の企画運営、ウェブディレクション、大学や専門学校での講義などを通じ、ファッション、音楽、文学、アートなどを繋ぐ活動を行っている。著書に『迷宮行き』(天然文庫/BCCKS)がある。