BRAUN

より少なく、しかしより良く

表紙

インタビュー

ベンジャミン・ウィルソン

デザイン家電メーカーとして、世界的な企業であるドイツBRAUN社。家電デザインに革命をもたらした、色あせることのないそのデザインは、巨匠“ディーター・ラムス”の「Less,but better=より少なく、しかしより良く」の哲学をもとに創り上げられました。そして、その哲学は現代のBRAUNデザインチームにも継承され、新たな可能性を追求し続けています。そんなBRAUNデザインの現在を知るべく、現役のBRAUNデザインチームのプロダクトデザイナーであるベンジャミン氏にインタビューしました。どのようにしてBRAUNデザインは誕生するのか?BRAUNが求めるデザインとは?など、普段は知ることの出来ない貴重なお話を伺いましたので、是非ご覧ください。

作品 ベンジャミン・ウィルソン
世界中に影響を与え、数多くのコレクターも生み出しているBRAUN製品ですが、ななかでも時計は当時のオリジナルを使用していた方も多くいらっしゃいます。そんなBRAUNの時計を新たにデザインする際に、最も気を付けていることは何ですか?
新しい時計をデザインする際に難しいこととしては、時計の必要性が以前とは変わっているということです。今は携帯電話にも、ノートPCにも、どこにでも時刻が表示されていますので、時計を本当の意味で「必要」としている人はいません。だからこそ、人が欲しくなる、身に着けたくなる、そして時には個性を主張するアイテムとなり得る「もの」をデザインするということが、一番のチャレンジだと考えています。面白いことにこれらの目的を満たすと、往々にして純粋に機能的なデザインになるのです。デザイナーという仕事を一番面白いと感じるのは、「何を改善したら、これはBRAUN製品になるだろうか?」と考えている時です。

製品開発やデザイン、またコンセプト構築の際にインスピレーションを受けるのはどのようなものがありますか?
私がインスピレーションの源として好きなものの一つに「素材と工程」があり、特にそれらの持つ元来の美しさには心を動かされます。素材や製造工程に感化されて生まれるデザインというものをとても大事にしており、私たちの手がけたセラミックのモデルはこの良い例と言えます。
セラミック

ケースからベルトに至るまで、セラミック素材を使用した「BN0171」シリーズ。光沢感が特徴のセラミック素材を、あえてマットな仕上がりにしたところに機能美を感じる。

プロダクトが完成するまでには様々なプロセスがあると思いますが、一番重要なプロセスは何でしょうか?
デザインは何もないところからは生まれません。とても複雑なプロセスと、その他様々な開発プロセスでたくさんの要素が必要となります。今のデザインツールは3Dの製造を容易にしてはくれますが、それらはデザインをかたちづくるために必要なツールの一部に過ぎず、良いデザインを生み出すためにも模型はいまだに重要な役割を担っています。製造模型を様々な開発ステージで制作していくことは、私たちのデザイン開発プロセスに切り離すことの出来ない工程です。例としてBN0106のCAD前デザインと、実際に制作した模型をご覧ください。
セラミック セラミック

プレステージ「BNC0106」。特徴であるダイヤルや丸みも模型により再現されている。

他のメーカーや、デザイナーの作品を見たり影響を受けたりすることもありますか?あれば具体的に教えてください。
影響を受けたデザイナーは確かにいますが、デザイン文化に根差した企業は素晴らしいインスピレーションの源です。それまでの常識を覆し、誰も真似しないことをし、改良が絶対的に必要な事柄をより良くしていく、そんな企業です。具体的にはNest(注釈: 工業デザインのコンサルタントを行う米企業)や、カリフォルニア州にあるアップルなどであり、日常使用する製品に「良いデザイン」という考えをもたらした彼らの功績には感謝しています。
かつて、ディーターラムスがデザインしたBRAUN製品が、アップルなど世界中に影響を与え、今、その企業から新たに刺激を受ける、インスピレーションが時代を超えて循環してくのは面白いですね。良いデザインの製品が私たちの日常にもたらす影響というのは、どのようなものがあると考えますか?
その製品のデザインが優れたものであれば、日常の中で何か主張するようなことはありません。私たちの製品は日用品であり、主張しすぎたり目立ちすぎることなくそれらを使う経験そのものを特別なものにしたいと考えています。ディーターラムスはよく「良い製品は、優れた英国執事のようなもの。彼らはあなたが必要な時にそこにいて、それ以外の時はいつでも影子に徹しているのです。」と言っていましたし、それは今日でも真実だと思います。
現在もBRAUNデザインは様々なデザイン賞を受賞しています。時代と共にBRAUNのデザインはどのように変化してきたと思いますか?また、これからどのように変わっていくのでしょうか?
今日のBRAUNデザインの価値は、60年前のBRAUNデザインの価値と同じものに根差しています。機能的であること。直観的であり、美しいこと。品質と精密さを持ち合わせた製品であること。私たちはこれを”The strength of pure (純粋であることの強さ)”と呼んでいます。
日本にもたくさんのBRAUNファンがいます。最後に、日本のBRAUNユーザーに対してメッセージをお願いします。
日本の皆さんが私たちのデザインした時計を日常でどのように身に着け、組み合わせていらっしゃるのかを見ることが楽しみです。私たちが作り出す製品が、皆さんの毎日を彩ることが出来ることを願っています。
ベンジャミン・ウィルソン
ベンジャミン・ウィルソン
オーストラリア・メルボルン出身。スィンバーン工科大学でデザインを学ぶ。スィンバーン・デザインセンターや国際的なデザイン事務所で経験を積む。2003年、ブラウンデザイン賞に出品。2003年からブラウンのデザインチームに所属。